和楽器の音色作り
「雅楽っぽい曲を作りたい」
YouTubeでBGMリクエストを承っているのですが、
【ジャンル】神秘的・幻想的(ダークファンタジー/ファンタジー)
【雰囲気・感情・場面】民族系
【使用して欲しい楽器】和楽器(琴・三味線・尺八・鈴・太鼓など)」
というリクエスト内容だったので、雅楽のような雰囲気で制作することにしました。
「いやでも待て、笙とか篳篥(ひちりき)とか…手持ちのソフト音源にないな…」と。
ですが、『笙』の音は以前に作ったことがあったので、これをまた利用することにしました。
私自身がメモとして残しておきたいので文章は雑ですし、あくまで”それっぽい音”、”他の楽器とミックスすればそれっぽく聞こえる”程度ですが、雅楽風の音楽を作ってみたい方はご参考にどうぞ。
私はProToolsを使用しておりますので、笙は付属のAIR Music Technologyのマルチ音源『Xpand!2』を使って作っていきます。
篳篥(ひちりき)は、UVIの『WorldSuite2』を使います。
笙の音色作り
上記動画の00:38〜の音色です。
どうでもいいけどこの曲、私はどんな心理状態で作ったんだろうか…。
以前から「笙ってハーモニカっぽい音色してるよな〜」と思っていたので、そこから音作りができないかと試行錯誤して、Xpand!2だと【アコーディオン】の音色を少し混ぜることでより自然になったので、2音色のブレンドで作っていきます。
チャンネルAに『ハーモニカ』を選択。
チャンネルBに『タンゴアコーディオン』を選択。
アコーディオンはハーモニカに少し混ぜる程度にしますので、レベルを下げます。
Xpand!2は複数音色を選択した後、トータルでエンベロープを調整できる『スマートノブ』があります。
左側【EASY】から『Attack』『Release』『Cutoff』を調整。
笙をYouTubeなどで聞くと、息を吹き込んでから音が発生するまでに時間差があります。
フワーッと和音が鳴るような感じ。そこで、アタックを遅くします。
人が息を吹き込んで鳴らす楽器、いわゆる【管楽器】は音が出るまでに少々ラグが生じます。
なので、使っている管楽器の音色が「リアリティがないな」という時はアタックが早すぎる場合があるので、遅めの設定をするとちょっとマシになるかもしれません。
笙は息を吹き込んでも吸い込んでも音の出る楽器なので、吹奏楽などの管楽器より同じ音を長く鳴らすことができます。
少し余韻を残したいのでリリースの調整、ハッキリした音色にしたいのでカットオフを上げる設定に。
エンベロープは、使っている音源の音色を聞きつつ調整してみてください。
笙の和音構成
音色作りが完了!さて、コードを弾いていくか…と、PopsやRockのようにダイヤトニックコードを使用する訳にはいきません。
和風の音楽、雅楽の楽器には特殊な和音・スケールがあります。
例えば和風の楽曲を作りたいのであれば、スケールは【メジャーペンタトニックスケール(ヨナ抜き)】とか【隠音階】と呼ばれるものを使うと、和風になります。
他ジャンルでも言えることですが【作りたいジャンルで使える音】はきちんと知っておいたほうが、そのジャンルの楽曲により近づけると、私は思っています。
笙の和音は「合竹」と呼ばれます。11種類あり、構成・名前がこちら。
笙はB4〜F#6までの音域なので、上記楽譜のオクターブ上で鍵盤を弾いていきます。
メロディは上記の和音で構成されている音を使えば違和感はありませんが、もし和音構成音にない音を使う場合は、和音にその音を追加するかどこかの音を変更します。
合竹ではあり得ない構成音になってしまうかもしれませんが、どうしてもそのメロディ音を使いたい場合は和音を違和感なく調整するほうが良いかなと思います。
それでは、和音を弾いていきます。
なるべくバラバラに弾きます。
あとは「息を吹き込む・吸い込む」を表現したいので、所々少しだけノートに隙間を開けます。
完成した音がこちら。
笙は指遣いによって同時に出せない音があるなど演奏方法もあるので、もっと詳しく知ってから作りたい方は調べてみてください。
*双調
雅楽に使われる調子「十二律(じふにりつ)」の中の一つ。中国や朝鮮でも用いられている。双調はG(ソ)を主音とする。
篳篥の音作り
続いて、篳篥(ひちりき)の音作りです。
篳篥には【大篳篥】と【小篳篥】の2種があって、通常『篳篥』と言えば【小篳篥】のことを言うそうです。
こちらも他の楽器で似ている音色を探していきます。
篳篥の演奏をYouTubeで聴く…。
…。
「あ、バグパイプ…?」
そう、スコットランドの代表楽器です。
バグパイプを調整していけば、篳篥の音に近づくかも…?
と言うことでUVI Worldsuite2のバグパイプを調整していきます。
バグパイプだと、ソロ演奏と言うよりは複数人の篳篥奏者が演奏をしているような音色かなぁと思ったので、アンサンブルの設定にします。(頭の中の雅楽奏者を増やすイメージね)
篳篥も『管楽器』の一種なので、エンベロープ調整をしていきます。
アタックを遅く、音量を少し下げたいのでサスティンを80%くらいに。サスティンで設定した音量までさっぱり減衰させたいのでディケイは0。
余韻を残したいのでリリースも調整します。
音色の調整が完了したら笙の合竹で使われている音でメロディを構成、次はピッチベンドの調整をします。
篳篥のピッチベンド調整
篳篥の演奏を聞くと、息を吹き込んで目的の音までのピッチ(音程)が滑らかに動くような*奏法が印象的なので、ピッチベンドを使ってそれっぽい音を作っていきます。
*この奏法を【塩梅(えんばい)】と言う。
完成した篳篥の音がこちら。
完成楽曲⬇︎
篳篥だけだとメロディがはっきりしないので、龍笛としてアイルランド楽器の【ティン・ホイッスル】を混ぜています。
その他の楽器は太鼓・鈴などのパーカッション、琴、琵琶の代わりにバンジョーを使っています。
専用の音源は使わなくても、他の楽器とミックスするとなんとなくそれっぽく聞こえませんか…?
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