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それでも、どうしても欲しかった

海を見つめる深青の瞳も、儚げな横顔も、その過酷な運命さえも手に入れたかった

だから、食べた

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Original fictional soundtrack
『深青とプレデター』

1.Main Thema:人魚の末裔
2.思惑
3.落ちる
4.カリュブディス
5.魔海の巣
6.海妖女
7.イリアス
8.過去
9.
10.捕食者
11.ユークレース
12.Ending:深青

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サブスク

Character

ディオン・アーティー (海賊)
:海賊団「クルヴィ」のキャプテン、海上で暮らす

イリアス・セレーネ (海貴族(うみきぞく) / 不老長命)
:ラビスの父、ラビスが生まれる前に人間に捕食をされ命を落とす

ラビス・セレーネ (海貴族(うみきぞく) / 不老長命)
:人魚の末裔、海貴族現王

テオ・クロニス (海族(うみぞく) / 不老長命)
:海族のエリート、セレーネ家の執事

カリュブディス (海妖女(かいようじょ))
:とある目的のため、海を我が物にしようとしている

Story

海底に住む人魚の末裔である海貴族の《ラビス》は、海妖女カリュブディスが荒らす海の平穏を取り戻すため、海底都市の海族の兵士と共に数十年に渡り戦っていた。だが、その長い戦いの中で兵士は何千人と命を落とし、戦力は衰える一方だった。

ラビスは、海上の海賊団「クルヴィ」に協力を求めことにした。

海貴族と海賊は144年前から敵対関係にある。

しかし海上にもカリュブディスの手が回ってきたため、お互い本意ではないがラビスとクルヴィのキャプテン《ディオン》は手を組んだ。

海妖女カリュブディスは海ゴブリンや深海魚のラブカを率いて、海を手中に収めようとしていた。

ラビスとディオンは海のあちこちに造られたゴブリンやラブカの巣を潰し、カリュブディスが居を構える城へと向かう。

広い城の中でも数多くの敵が待ち受け、激しい戦闘の最中二人は逸れてしまう。

ラビスはひとり、やっとの思いでカリュブディスの元へ辿り着く。

カリュブディスとの戦いは壮絶だった。

ラビスは深い深い傷を負い、立てなくなった。

意識が朦朧とするラビス。

そんな中、ディオンと同じ顔をした《イリアス》と名乗る人物が現れ、ラビスの元に歩み寄ると「ユークレースが手に入るなら、なんでもする」とこぼした。

それはディオンの男らしいバリトンとは違う、優しく線の細い声音だった。

イリアスの透き通った淡い茶色の瞳は、ラビスを見ているようで違う誰か或いは何かを見ているようだ。

…ユークレース。

カリュブディスが持つ深い青色をした石《ユークレース》は人間や海族の傷を癒し、海貴族の魂を蘇らせる不思議な石だ。

この人物は、自分の傷を癒すためにその石をカリュブディスから奪うのだろうか

霧がかる頭でラビスは思う。

視界も霞はじめたラビスは、海妖女カリュブディスの高らかな笑い声と同時に発せられた「それでこそ、我がしもべよ」という言葉を聞き、瞼を閉じた。

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ラビスが目を覚ます。

見慣れた天井と、覚えのある布の感触が背中や腕に伝わる。

それが全身に行き届くまで数秒かかったが、自室のベッドだとわかる。

生きている…

視線を感じその方向に顔を向けると、執事のテオが神妙な面持ちで傷の具合を尋ねてきた。

城での戦いで逸れたディオンもまた、ひどい傷を負ってしまったらしい。

傷はまだ痛むと答えたラビスは、続けてイリアスという人物について聞いてみた。

執事のテオはその名を呟き、普段から彼が丁寧に手入れをしている眼鏡の奥にある目を見開いた。

ラビスは、カリュブディスの城で意識を失う前、ディオンと瓜二つのイリアスが現れたと言葉を続けた。

イリアスがユークレースを海妖女から奪って、この傷を癒してくれたのか

話を聞くテオの顔が、ゆっくりと青ざめていくのをラビスは感じた。

テオは少し震える唇を開き、こう言った。

イリアスはラビスの父親で、ラビスが生まれる数週間前に人間に捕食された、と。

海貴族は、それが例え親族であっても生まれる前に亡くなった人物の名前や死因について聞かされないことが式たりだ。

ラビスは初めて父親の話を聞く。

ー 捕食、された…いつ?

ー …144年前です

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ーー あの日、全てが粉々になった。感情も魂も、音を立てて割れたのだ。ユークレースの名のように ーー

「深青とプレデター」|ハシマミ
 ※転載禁止